The pride of ourselves《前編》

 

 

 

「久芒さーん。いきますよー」

華武高校一軍専用グラウンドに、全くやる気のない声。
部活前のウォーミングアップとして、一軍の面子はペアでキャッチボールを初めている。
そのペアの一つは、やる気のない声の持ち主、芭唐と、白髪の少年、白春。

「いいングよ〜」

グローブをしていない右手で、長い袖を振り回し答える白春。
そしてボールを握る芭唐。

(メンド〜…。今日はサボるつもりだったのになぁ)

心の中でブツクサ文句を言っている芭唐。
部員に見咎められる前に帰ろうとしていたが、玄関前で屑桐に出遭ってしまったのが運の尽きだった。

「………あッ」

上の空で白球を投げた所為だろう。白球は白春の左横の方に飛んでいってしまった。

「久芒さんスイマセー……」

とりあえず謝っておこうと掛けた言葉が、最後伸びながら途切れる。

「よ゛ッ」

白春は慌てる事無く白球が落ちてきた所を狙い、右足を軸に半身を後ろに捻った反動を利用し、
左足で小さな白球を勢いよく蹴った。

「ぅわっ!」

鋭く、そして的確な位置に帰ってきた白球を、驚きつつも反射的に受け捕る芭唐。

「ビ、ビビったー…」
「御柳ー! もっと真面目にやりングー!」

グローブの中の白球を呆気にとられた表情で見つめている芭唐の向こうで、白春は怒っていた。

 

 

 

「ミヤはまだ『アレ』に慣れてなさ気なんだ〜(^○^)」
「朱牡丹さんも最初はやっぱビビりました?」

部活の十五分の休み時間。ベンチで長閑に話している芭唐と録。
話題はこの場にいない白春の蹴り技である。

「まぁね。つーか、アレで野球やるなんて誰でも驚く気(=A=)。
 ――でも、入部したときからあんな上手かった訳じゃないんだよね」
「そうなんすか?」

冷えたスポーツドリンクを飲む録の横で、意外そうな顔を浮かべる芭唐。
それを受けて、ペットボトルを口から離す録。

「うん。あれは、オレがここに入った時の話なんだけど――――」

 

 

 

第一印象は最悪だった。

「お前、そんなカッコで暑くなさ気?(;― ―)」
「お前こそ、そんな゛薄着で見てるだけで寒いング」

今日から一年間共に過ごす事になる教室の中で、二人は出会った。
片方は、縞々模様のキャスケットに素肌に直接羽織った詰め襟をはだけてさせている。
見ているだけで寒そうである。(それ以前に大抵の女子生徒は直視できないと思われる)
片方は、既に季節外れになっている白いマフラーと、手が完全に隠れる程袖が長い詰め襟。
見ているだけで暑そうである。

「『ング」って…もしかしてing形? 半端に英語使ってるなんて逆にカッコワル気〜( ̄3 ̄)」
「お、お前だって、「げ」とか使ってるだろ! そっちの方がおかしいング!」

入学式どころか担任すら来ていない、出会い頭の先の先で早くも互いの特徴を罵倒しあっている二人。
第三者から見れば五十歩百歩。どんぐりの背比べ。つまりはどっちもどっちなのだが、本人たちはそう
は思っていない。

「お前とは絶対仲良くなれなさ気!!\(`○´)/」
「こっちだって断りング!!」

――――完全な決別。
これが録と白春の出会いである。

「ところでお前ダレ?(・_+)」
「お前こそダレだよぅ…」

 

 

 

「つまんなさ気ー( ̄A ̄)」

録は足元に落ちている白球を拾うと、そのまま座り込んで溜息をついた。
名門と名高い華武高野球部に入部して約一週間。
一年生の最初と言えば、やはり球拾いだった。一年生に練習メニューが組まれるのはもう少し先だと、
菖蒲監督は言っていた。

(まだ入部したばっかだからやんなきゃいけないっていうのは分かるけど、やっぱ野球らしい事した気
だよなー(´。`))

そう心の中で呟くと、録は目だけを動かして、辺りを見回す。
右を見れば、自分の練習メニューをこなしていてコチラには目もくれない上級生の姿。
左を見れば、長い袖をまくって真面目に球拾いしている白春の姿。

「……アイツか(−\−)」

野球らしい事を少しでいいからしたい。だから、とりあえず近くにいる人とキャッチボールをしよう。
そう思って同じ一年生を探せば、よりにもよって白春だった。
録としても、わだかまりを抱いている相手なので気が進まないのだが、だからといって相手を探してい
る間にサボリがバレるのは避けたい所である。

「仕方ないか…C-(´。`)」

そう自分を納得させてから、録は白春に声をかけた。彼に最低限声が届く大きさで。

「なぁ、キャッチボールやらな気(^◇^)ノ?」
「…ん? でも、球拾いやらなきゃ……」
「ちょっとだけだよ。今先輩たち見てないしさ。ずっとボールばっか拾ってても気が滅入るだけじゃん」
「うぅ〜…」

サボるのは良くない。でも断れない。
迷っている白春の最終的な意思を待たず、握っていた白球を白春に投げる。

「そっちいった気ー!(^○^)/」
「えっ、わっ!」

録の言葉を聞いて顔をあげれば、確かにこっちに飛んでくる白球があった。
あくまでキャッチボールなので、本気ではない。軽く弧を描いて白春の所に落下してきた。

「いきなり投げないで欲しいング!」

驚いた表情のまま、大きく一歩下がる白春。
その行動に、録は眉を寄せる。

「オイオイ(‐_‐;)。別に下がんなくても、……………」

捕れるじゃん。

その言葉を出す前に、録を呆気に取らせるに充分な行動を、白春は行った。
ボールが落下し、丁度白春の頭と同じ高さにきたときに、白春は左足を後ろに下げた。
そして、そのまま真上に向かって勢いよく蹴り上げる。
落下してきた白球と白春の足の甲が触れ、白球は真っ直ぐ上へ飛んでいった。
そして、再び落下してきた白球を今度は手でキャッチした。

「…………………………………」

その極めて自然な一連の行動を、録は一言も出さず、あんぐり口を開けて眺めていた。
ボールの動きを足で制御し、キャッチする。
本来手のみを使って行う捕球を、白春は足でやってしまったのだ。

「………………………非常識気」

録はやっと、それだけポツリと呟いた。
その向こうで白春は安堵の息をつきながら、右手の中の白球を見つめていた。

「良かった。上手く捕れりング出来て…」

その小さな呟きを、録は聞き逃さなかった。

「……もしかして、いつもは上手く捕れなさ気って事?(・・?」
「う゛っ!」

録の言葉に、胸を抑え明らかに身を引く白春。
明らかに図星だと分かる。
録は意地悪く笑うと、

「そうだよなー! あんな変な捕り方、普通出来る訳なさ気だよな。
 やっぱりマグレだったんだ(^U^)」
「ち、違いング! いつだって出来るング!!」

録の言葉に、白春はムキになって反論する。
それが益々録のイジメを煽る事になる。

「それじゃ、も一回やって見せろよ(`U´)」
「え゛」
「いつだって出来るなら、またやってくれるよな。今すぐ(¬v¬*)」
「………………」

俯いて押し黙ってしまった白春を尻目に、録は自分が集めたカゴの中の白球を一つ取り出す。

「それっ」

そして白春に向かって、軽く投げた。抜群のコントロールで、落下点は白春が手で捕れる位置である。

「あっ…」

白春は慌てて、一歩下がると、左足を後ろにやり、そしてタイミングを見計らって蹴り上げる。

 

スカッ

 

左足は白球にカスリもせず、白球はそのまま地に落ちてしまった。

「ぅわっ!」

蹴った勢いが良すぎたのか、白春はバランスを失い、尻餅をついてしまった。
その横で白球が転がり、そして停止した。

「やっぱ無理じゃん( ̄≡ ̄)」
「うぅ…」

呆れたように言う録の言葉に反論できず、白春は尻餅をついた体勢のまま、またもや俯く。
そして、陰になった顔から、鼻をすする音が聞こえる。

(………………鼻炎だよね…)

そう思っても、何だか録の中に罪悪感が芽生えてきてしまい、録はそれを振り払うように頭を振る。
そして、もう一つ白球を掴む。

「普通に捕ればいいじゃん。足使わないで、手だけで」
「え゛」

録はそれだけ言うと、三回目の白球を放り投げる。
これは録なりの、名誉挽回のチャンスを与えた、筈だった。

 

ゴンッ!

 

顔を上げた白春の鼻に白球が、派手な音を立てて直撃する。

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
「……………………………………ゴメン気<(_ _)>」

鼻を抑えて声も無くうずくまる白春に、先ほど芽生えた罪悪感もあって、録は素直に謝った。

「やっぱ座ったままじゃやりにく気だよね。じゃ、立って――…」
「……もういいング」
「は? でも……」
「もういいング!!」

強い口調で言われ、録は怯む。

「お前…」

鼻を抑えたまま、白春は膝に顔を埋めて、

「どうせ、出来ないング。
 何やっても、どう頑張っても」

白春は静かに、震える口調で、それだけ言うと、いきなり立ち上がり、録に背を向けて走り出して
まった。

「あ、おい、待てよ!!」

録の制止も聞かず、白春は走り続けた。周りの一年生も驚いた表情で白春を見つめる。
そして、彼は足が速く、見えなくなってしまった。

「アイツ、どうした気……?」

録は不思議そうに、顔を歪める。
そして、無意識に伸ばしていた手に気付いて、引っ込める。

「――――変なの――――」

今の録には、そうとしか思えなかった。

 

 

 

†続く†

†あとがき†

このサイト初めての続き物。
PCの中に一ヶ月以上も眠っていて、このままやっても続かないな、と思い、思い切って
《続く》の文字を打ちました。
本当は嫌だったんですけどねー。でも長くなりそうだったし…。

でも続き、書くかな、私………………。(をい)

 

03/10/29

   

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