call MY NAME

 

 

 

「屑桐さーん」
「…………………」
「聞いてるー?」
「…………………」
「おーい」
「…………………」
「ねぇ、どこまで行くのー?」
「…………………」
「屑桐さーん」

「どうして怒ってるんですか?」

屑桐は突然立ち止まる。
ずっと腕を引っ張られていたはその背中にぶつかる。

「いたい………」

両手で鼻を抑えるに、屑桐は背を向けたまま呼びかける。

「本当に気付いてないのか?」
「え?」

その低い声は、いつもよりより低くなっていた。

……本気で怒ってる。

部活に遅刻したとか、そんな時のレベルじゃない。
屑桐は本気で頭にきている。その事実を言葉にしなくても、声だけで雄弁に語っていた。
きっと、「地の底から響くような」というのは、こういうのを言うのだろう。
………しかし。

「……ゴメン。全然分かんない」

は降参だと言わんばかりに両手を上げた。

「………あ、もしかして」
「気付いたか?」
「部活もう始まってた?」
「…………………」

屑桐は何も答えない。なら違うらしい。
気になるのは、心なしか背中から放たれている怒気がより濃度を増したような…………

「………ゴメン。」
「何について謝っている」
「え、屑桐さんがあたしに怒ってることについて」
「それが何か分からないのにか」
「……………だって今の屑桐さん、メチャクチャ怖いんだもん…」

謝らずにはいられない。

……………………………………………

「………………………」

屑桐はあからさまな溜息を吐き、やっとに面を向けた。

「さっき、御柳と話していただろ」
「うん」
「その時、……、呼んでいただろ」
「………何を?」
「……………………………」
「何を?」
「……………………………」

急に黙りこくってしまった屑桐を、は追求しながら見上げる。

「ねぇ、何を?」
「………分からないのか?」
「だから訊いてるんでしょう!」
「…………………………なまえ」
「え?」
「名前、だ。御柳の名前」

顔を真っ直ぐ向けたまま、視線だけを他所に外し、端的に答える屑桐。

「なまえ…? …………あぁ!」

はやっと分かった、と、両手を叩いた。

それはつい数分前の事。
野球部員がストレッチをしている筈の時間に、は御柳に話し掛けられた。つまり
彼はサボっていたのである。
そのまま世間話が始まる。
屑桐が御柳の不在に気付き、呼び(怒り)に行った時に、聞いてしまったのだろう。

が御柳の事を「芭唐」と呼んだ事を。

「――――もしかして、怒っていたんじゃなくて、妬いてたの?」
「……いや、そんな訳じゃ………」

が訊くと、屑桐はバツの悪そうな顔を浮かべて顔を背けた。
さっきと違って勢いや怒気がない。

「そっか。そうだよね。一応は恋人同士なのに屑桐さんの事苗字で呼んでるのに、御柳
 くんの事「芭唐」って呼んでたら、気分悪いよね。
 ごめんね、屑桐さん」
「俺たちの関係は「一応」なのか」

あっけらかんとしたの物言いに、憮然とする屑桐。
これも嫉妬の所為か、いつもより表情豊かである。

「ごめんごめん。「一応」じゃないよね。
 ………あたし、どうしてもダメなんだよね」
「…何がだ?」

唐突に始まったの話に、屑桐は戸惑いつつも付き合う。

「あのね。前々から思っていたの。どうして屑桐さんの事名前で呼ばないんだろうって。
 試しにやったら御柳くんの事は「芭唐」って呼べたし、ろっ君や白春くんなんていつも
 名前で呼んでるじゃない?
 でもね。屑桐さんだけはどうしてもダメなの。名前で呼べないの」
「…………」
「たぶん他の人でも呼ぼうと思えば呼べるよ。でも屑桐さんを下の名前で呼ぼうとすると、
 どうしても突っかかっちゃうの」
「…………」

の言葉に、屑桐は複雑そうな表情を浮かべる。
話の先が見えない上に、少し傷つく内容である。

「あ、でも、ショックに思わないでね。別に屑桐さんが好きじゃないって訳じゃないんだから」

も気付いたのか、今更ながらフォローを入れる。

「――――寧ろ、逆。大事だから、恥かしくなっちゃうんだと思う。
 それはそれで、『特別』だって、事なんだから。
 だから、その――――」

は話が進むにつれ、顔がどんどん赤くなっていき、声も消え入りそうになっていく。

「………………………ゴメン。何て言えばいいのか分かんなくなっちゃった。
 今の忘れていいよ。屑桐さ――――――――――」

屑桐は、誤魔化すようにひらひらさせているの手を掴み、自分の方へ力一杯引っ張る。
そして、収まってしまったの身体を、強く、強く抱き締める。

「…ぁ」
「お前が俺の事をそう思っていてくれているのなら、それでいい」
「………………」
「ただ…やはり、未だ「さん付け」というのは不満だ」

屑桐はの身体を少し離し、右手で彼女の頬を包み、親指で唇をなぞる。
豆だらけの大きな手。

「急がなくていい。だがいつか、近いいつか、俺の事を名前で呼んでくれ」

お世辞にも上手いと言えないぎこちなさすぎるだけど優しいその笑顔。

「…………………うん」

は屑桐を真っ直ぐ見つめ、約束した。

「頑張る…って言うか、頑張るものじゃないよね。自然に言うものだよね。
 でも、いつか絶対呼ぶから」

 

 

 

†終わり†

 

†あとがき†

保子さん、キリバン1300有難うございました! 保子さんのみお持ち帰り可能です。
リクエスト内容は「夢で、主人公の事が大好きな屑桐さん」でした。
色々考えた結果、「好きなら大事に思うしヤキモチも妬くだろう」と結論し、こうなりました。
あとは、献上するものなので、サービス良くしようと(笑)。
真に名前を呼ぶ事に抵抗があるヤツは私です。「無涯」だなんて…そんな大それた事…。
「こんな屑桐さん偽者だ!」という場合は返品可ですので、遠慮なくドウゾ。

それではこの辺で。

 

03/11/19

 

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